第一章 夢と現実

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風になびく癖のない黒い長髪は、春の暖かな日差しを吸収してキラキラと輝いている。 きめ細やかな白い肌。その透明さに相反して二つ の大きな瞳の奥底には、何事も受け付けぬ決意の炎が燃え滾り、渦巻いているように感じられた。 「雨宮真理奈……」  春の季節には似ても似つかわない強い風が屋上を流れた。  雨宮は「おっ。知っているのか」 と驚きの混じった声を出す。  知っているも何も、雨宮真理奈のことを知らない生徒は少なくともこの高校にはいないだろう。 かく言う俺も、学校中の男子生徒が雨宮真理奈のことを『もったいない美少女』 と、崇めていることくらいは知っている。 「きみが私のことを知っているのは驚いたが、私もきみのことは知っているぞ!」  彼女は、外見からは想像もつかないような馴れ馴れしさで話しかけてきた。そう。彼女が『もったいない美少女』と言われている理由はこれだ。 彼女はまるで薄毛が気になり始めたおじさんのような性格をしているのだ。 「へー」  俺があからさまに適当に返事をすると、彼女は俺の瞳をじっと見詰め、言葉を漏らした。 「流石だな。マインドブレイカーの異名は嘘じゃないらしい...」
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