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俺は彼女に鋭い視線を向け、言葉を放つ。
「おい。これはいったい何の真似だ?」
雨宮真理奈は俺とは対照的に満面の笑みを浮かべる。
「アハハ。やはり私が見込んだ通りの男だったな! きみは!」
俺が反論しようとするのを手で制止し、光輝いていた奇妙な本に視線を落とした。
そして中身を見るように促す。その有無も言わさ
ぬ瞳に逆らうことができるはずもなく、地面に落下した本に視線を合わせた。
すると――何も書かれていなかったはずのおもて表
紙に、横書きで白い文字が刻まれていたのだ。
白く刻まれた文字は――――『Book Dive』
「ブック…………ダイブ?」
何故かはわからないが、本からは圧倒的な存在感のようなものを感じ、視線を逸らすことができなかった。
俺は恐る恐るその本を手に取る。
ザラザラとした革特有の表紙に刻まれた白い文字。
いつしか俺の意識は本に奪われ、無意識のうちに手が伸びた。そして、表紙を開く。
1ページ目にはクリーム色の紙に、黒くはっきりとした文字がびっしりと書かれていた。
最上部には、おもて表紙と同じ文字が横書きで書かれている。
さらに、一行空けて説明文が。またさらに一行空けて、1から10までの数字が最下部まで続いており、其々の数字の横に文章が羅列してあった。
説明文には以下のように書かれていた。
『Book Diveとはその名の通り、本の中に潜る行為。そして、潜る行為を行う者をBook Diverと呼ぶ』
――このふざけた本はなんだ??
中の内容を読んだ途端に俺の本への関心は一気に冷める。
正体のわからない未知の感情もだんだんと薄れていく。
まるで急激に真夏から真冬へと季節が移り変わったかのように心の中は氷河期を迎える。
何時の間にか元の無関心な性格へと俺は戻っていた。
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