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俺の心情の変化に気がついたのか、雨宮真理奈は浮かべていた笑みを崩し、ため息をつく。
「まさかここまで物事に興味を示さないとは…。一つくらいこの状況についての疑問があってもいいと思うのだが?」
雨宮真理奈は、風になびく絹のような黒髪を払いのけ、「実際に体験するのが一番か……」 と。
ぼそっと意味の理解できないことを言う。
すると彼女は俺が持っている本と瓜二つの本を手元にマジックのように出現させる。
そして大胆にも俺の手を握り、ある言葉を漏
らした。
『ダイブ イン マジックワールド』
俺と雨宮を中心に渦巻くように強い風が吹き荒れる。しかし、俺達は吹き飛ばされることはない。
まるで台風の目の中にいるような感覚だ。さらに、雨宮真理奈の持っていた本が突然パラパラと捲れ、中腹あたりで止まった。
刹那。本から強い光が溢
れ出し、俺の視界はホワイトアウトした。
眩しさにより反射的に目を瞑る。すると周りに渦巻いていた風がピタリと止み、さらに体の平行感覚を突如失う。
身体の殆どの感覚が奪われた状態。唯一感じるのは雨宮真理奈の手の感触だけ。
俺は体験したことのない不思議な感覚に身を委ねる。
すると、頭の中に無機質な声が流れ出した。
『魔法が発達した世界――マジックワールド。主人公ルエルは平穏な生活をおくっていた。しかし、世界では様々な異変が起き始めていた。夢である一人旅に出ようと決心したルエルに立ちはだかるいくつもの試練。ルエルは乗り越えることができるのか――』
――なんだこれは。いったいどうなってるんだ?
この感覚が永遠に続くように感じられたまらず目を開けようと試みる。
しかし、瞬刻の間に体の支配権が戻り、嵐のような風の音が鼓膜を刺激した。
さらにはあらゆる方向から風が全身を襲い、浮遊感に見舞われる。
まるでスカイダイビングをしてるような感覚。
いや――現に俺は空を飛んでいた。
恐怖を感じながらも目を開ける。
するとそこには――――今まで見たことがないくらいの広大な空が目の前に存在していた。
目の前の空に圧倒されながらも、現在の自身の状況について理解するのは簡単であった。
あるはずの地面がなく、仰向けの状態で空を見ている。そして感じる落下の感覚。
そう――俺は今、落下している。
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