街金

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「車見せてもらっていいですかね?」 ヤカラっぽい外見とは裏腹な丁寧な対応。 下の駐車場に止めてある私の車を隅々まで見ていた。 「10万ですね。」 サバサバとした口調で私に言った。 本当は15万ほど借してほしかったけれど、背に腹は代えられない。 どの金融屋でもそうなんだけど、希望額を絶妙に下回る金額を提示される。 完全に足元をみられているのだろう。 それでも、喉から手が出るほど金に困っていた私は、10万を借りることになった。 いろんな書類に捺印し、車検証もコピーされた。 金利もといち以上だったと思う。 毎月の返済は銀行振り込みだった。 返済が滞ると車の名義が変わってしまうということだけは理解できた。 車がなければ彼女に会えなくなるので、この支払いだけは絶対に遅れないようにしなければと強く思った。 毎月の返済を必死で続けていたある日。 うっかりして千円足らずに振り込んでしまった事に気が付いた私。 車を取られてはかなわないと思った私は、次の日、足りない千円を振り込んだ。 すると翌日、車金融屋のAさんから電話が入った。 (ヤバい!一日遅れたからかな・・・。) 「パンドラさん!」 「は、はい・・・。」 私は少々ビビりながら電話に出た。 「ワシ、こんなん初めてやわ!」 「え・・・、な、何の事ですか・・・?」 「いや、昨日、千円だけ振り込んでくれたやろ?こんな律儀に返済してくれたん初めてやわ!」 どうやら、私が千円だけ振り込んだ事が非常に珍しいとのことだった。 大体、車金融にまで手を出す人間は結局のところ、ルーズな人間がほとんどらしい。 「ワシ、ちょっと感動したわ!」 「い、いや、私はただ車取られたら困るんで・・・。」 「パンドラさん!ちょっと時間作ってや!一緒に飯でも食いに行こうや!」 「え・・・。」 私はAさんにそんな風に言ってもらえた嬉しさと、これはさらに借金をさせる為の新手のやり方なのかと混乱した。 でも、結局、Aさんと食事に行くことになった。 そこから意外な展開に巻き込まれていくことになった私。                             <つづく>                                                 
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