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 いつもの放課後。特に用事も無い今日のような日は、素晴らしき放課後と称するに足るだろう。いつもどおり真っ直ぐ家に帰るとする。早く帰れば穏やかな読書やゲームの時間が待っているし、僕はまだお気楽な高校一年生で、現在は七月初頭だし。そんなに焦って勉強せずとも、程々に頑張っておけば許されるはずだ。  早めに梅雨が開けた最近の空は、嫌になるくらい全く同じに晴れ渡っている。窓の外、三階にあるこの教室から見える校庭には、帰りのホームルームの後いち早く飛び出した部活動所属の少年少女たちが、ストレッチを始めていた。毎日毎日、本当に元気なものだと思う。惰性で続けていた中学時代のサッカー部も、高校に入ってから辞めてしまった身としては、そんな冷笑にも似た気持ち(クズが…………)と、ほんの少しの羨ましさを覚えるしかない。まぁ、そこそこ体力もついたし、それで良しとする。  さて、荷造りも終わったし。出発、と思って自分の席を立った。 「うわっ」 「ッ! 痛ぇなコラ。周り見とけよボケ」  すると直後、茶色に染め、ワックスか何かでツンツンに立たせた髪の毛の少年とぶつかった。ぶつかったというか、お前さんそれわざとだろ、と言いたくなる様子だった。現に僕とそう体格の変わらないはずの彼の体は、殆ど揺るいでいない。  相手は、私立の癖に校則とかは割とゆるゆるなこの学校にしても、そのオサレはちょっと目立つんじゃねぇの? という感じのグループの中の、リーダー格らしい少年だ。現に今も、腰に着けてる二つ三つのウォレットチェーンがじゃらじゃらとうるさく音を立てている。
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