本校舎の夜(2)(章と久美子)

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「久美子、ここから逃げるぞ!」 章は緊張感のある声で、久美子に言った。 自分たちの存在は、もうすでに、おかっぱ少女に気づかれている。 だとしたら、少しでも早く、この場所から逃げ出し、おかっぱ少女から離れるのが自分たちの身を守る最善の手段のように思われた。 章は震える久美子の手を握り、できるだけ身をかがめ、この場から逃げるタイミングを探っていた。 「ここに隠れているのは……、誰? どうして、ここに……、いるの?」 章はおかっぱ少女のその言葉を聞きながら、本能的にこの悪霊に敵対してはならないと感じていた。 章が恐怖にかられながら、おかっぱ少女の顔をチラリとのぞき見ると、彼女の顔には、深い憎しみと激しい怒りが刻まれていて、 章は背筋が寒くなる思いをしながら、ゾッとして目をそむけた。
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