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僕の唇よりもほんの少しだけ冷たい君の額。まだ乾ききっていない君の髪の感触。
そういったものが、確かに君のカラダが僕の腕の中にあることを示していた。
君は僕の体にぴたりと頬を付けたまま、突然、クスクスと笑いだす。
君の体が小刻みに揺れて、君の髪が僕の胸をくすぐった。
そのくすぐったさに僕は、腕に抱きしめた君のカラダには僕へのキモチがないことを思い知らされる。
僕が手に入れたのは、きっと君のカラダだけ。
君のキモチは、ずっとケンタくんの側に置いたまま。
ふいに孤独感に襲われた僕は、腕のなかで肩を揺らしながらクスクスと笑っている君の顔を覗きこんだ。
テレビに向けられた君の視線を遮った僕の顔を避けるようにして、君はまた、テレビに視線を向けた。
今日もやっぱり、君の瞳は僕を映さない。
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