君の瞳は僕を映さない

2/9
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 僕は嘘つきだ。  本当は君のことなんて、これっぽっちも愛してなんかいない。  初めてのデートで映画を観たあと、喫茶店で話をしたときには「緊張して、映画の内容が頭に入らなかったよ」なんて言ったけど、あれも嘘だ。  本当は、映画がつまんなくて居眠りをしていたんだよ。  そうそう。何度も「愛してる」と言って君を抱いていたけど、あれも嘘だ。そうでも言わなければ君は抱かせてくれなかっただろ?  そこはお互い様だよね?  なんて名前だっけ? 例の忙しくて会えないっていう結婚を約束した彼氏。  君だって、彼と会えない淋しさを僕で紛らわさずにはいられなかったんだよね?  だけどさ。  もう、こんな関係は終わりにしようよ。  嘘をついて君の前で笑うのはうんざりなんだ。  疲れたんだよ。  君と過ごした三ヶ月は、それなりに楽しかったよ──ありがとう。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!