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今日、君に会ったら、そう言って別れるつもりだった。
そうすれば、きっと楽になれる。
こんな辛い思いをしなくて済む。
これ以上、君を好きにならなくて済む。
だけど……。
僕には、それができなかった。
君の笑顔が、僕にそれをさせなかった。
どうして君を好きになってしまったんだろう。
そんなことを考えながら、隣に座る君の手を握りしめる。
君の視線はテレビのバラエティー番組に釘付けだけど、君のふんわりと柔らかな手のひらが、僕の手をギュッと握り返す。
「かんちゃんは、あたしにとっては空気みたいな存在なんだよ。かんちゃんがいないと、あたしは息が苦しくなるんだ」
僕が君に好きだと伝えたときに、君が僕に言ってくれた言葉が頭の中に過る。
だけど、僕は君のそばにいるだけで、こんなに息が苦しくなる。こんなに胸が苦しくなる。
こうして、君の手を握りしめることだってできるのに。
こうして、君に口づけることも、抱きしめることもできるのに。
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