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僕は抱き寄せた君の真っ白な首筋にキスをした。
「あ……ん」と小さな声を洩らして、君は僕の背中に腕をまわす。
二人で並んで腰掛けるには少し小さいソファーがギシリと悲鳴をあげた。
「もう。テレビが見れないよ、ケンタ……」
僕の背中を、君の小さな手が優しく叩く。
そうか。
そういえば、君が結婚を約束した彼の名前はケンタだったね。
つい、君を抱く腕に力がこもる。
「もう! 痛いよ、ケン…………あっ!」
抱きしめる僕の両腕の中で、君の体がぴくりと強張るのがわかった。
「気にしなくていいよ」
抱きしめた君の耳元で、僕はそっと囁く。
君が僕を誰と呼び間違えようとかまわない。
君が僕を誰の代わりにしようとかまわない。
僕が君のそばにいられるのなら、それでいい。
「ごめんね、ごめんね」
嗚咽まじりに君は何度も何度も謝る。
「大丈夫だよ。気にしなくてもいいから」
僕はそう言って、君の髪を撫でた。
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