3117人が本棚に入れています
本棚に追加
「危ないから、あの部屋には一人で戻らない方がいいね」
「やだ、泥棒かな……あの辺は平和な地域だったのに」
彼女は呆然とまた腰を下ろし、頭を抱えた。
昨日、彼女と桐谷がどう接触したのか僕は知らない。
あまり桐谷のことは思い出して欲しくないけど仕方ない。
ゆっくり話を誘導する。
「いや、荒らされた感じじゃなかったよ。合鍵持ってる人間もいないなら、うっかり戸締まりを忘れたのかもしれないよね」
「でも、今まで戸締まり忘れたことなんかなかっ……」
反論し始めてから少し遅れて“合鍵”が脳に届いたらしく、言葉が途中で途切れ、みるみるうちに彼女の顔がひきつった。
顔にははっきりと「しまった」の文字が浮き出ている。
最初のコメントを投稿しよう!