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朝食を済ませて二人で彼女の部屋に戻ってみると、一晩おいても特に荒らされた形跡もなく、昨日のままだった。
“猫ちゃんもの”の段ボールの無事を確かめ安堵している彼女が滑稽で吹き出しそうになる。
僕としては下着ドロの方が気になるけど。
「よかったぁ。泥棒じゃなくて」
時遅くしてまたも合鍵の地雷を踏んでしまったことに気づいたらしく、彼女はハッと口に手を当てて僕の横顔を窺った。
やましいことがない証拠と信じて、いじくるのは我慢する。
「段ボールはこれだけ?」
「はい。あとは最低限の生活用品だけです」
不要になるものの引き取りをリサイクル業者に依頼した後、段ボールや小物は運び込んでしまい、午後には拒否権無しの彼女の転居はあっさりと終わった。
いや。
あっさり……でもなかったか。
突然やってきた冷蔵庫や洗濯機との別れに、彼女は少し悲しそうだった。
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