俺じゃない。

元右端の老人の安否など知る由もなく。
次はドっと溢れるこの駅での乗客で車内が埋まる。

…当たるんじゃねぇよカス。

スマホでネット情報を確認しながら現右端の座席の主は舌打ちをする。周囲に聞こえないぐらいの音だが。

いけね！背広の右ポケットに入れたはずのポケットティッシュを取り出してない…。

右手にスマホを持ったまま、左手を右ポケットまで持って行き、ぐいっと出そうとするが右横は若いOLだ。

パツンパツンの座席シートだ。
OLに当たっては誤解されてしまう。

オリャケツを触るんじゃねぇんだぞ？ティッシュを取るんだ。ん？わかるか？花粉症だ花粉症！

などと変に澄ました顔で遂行する。

前には、足が悪いのだろうか杖を持った女性の老人が苦しそうにポールにしがみついているがそれよりポケットティッシュを取らないと。

スマホは見ながら左手に指示を出す。

頭でボヤきながら、ガサゴソしていた左手はOLの尻に当たる。

OLはキッと睨み返すが混雑した状況だ、すぐに目線を外しスマホでラインをしだす。

一瞬の判断で、左手を元に戻す際に尻を左手でプリンっとかすめた。

ふへへ！成功！などと思いながらスマホに目線を戻す…と？え？