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「おーい、大丈夫ー?」
この声、この匂い。
ゆっくりと目を開けると、待ち望んだ人がいた。
「…やっと、会えた。」
「へ?」
何度も一緒に来た公園。
のんびり過ごしたベンチ。
だけど、こっちを見る顔は、いつもと違って不思議そう。
「えっと……人違い、かな?」
どうしてそんなこと言うの?
会いたくて、会いたくて、やっと見付けたのに。
「間違えるはずない!
ゆうちゃんはゆうちゃんでしょ?」
不思議そうな顔が、驚いた顔に変わる。
「キミは、誰?」
「誰って………あれ…?」
わからない。
ゆうちゃんのことはわかるのに、自分のことがわからない。
「誰、だろう?」
呟いた言葉に、驚いた顔が今度は困った顔になる。
「何か持ってる物はある?」
隣に座ったゆうちゃんに、魔法のカードを渡す。
「これ、どうしたの?」
また驚いた顔になった。
「これがあれば、ゆうちゃんに会えるから、
持ってきた。」
魔法のカード、やっぱり凄いや。
ちゃんと会えた。
だけど、嬉しくてゆうちゃんの顔をじっと見ていると、なんだかいつもと違う気がしてきた。
「何か思い出した?」
優しい声はいつもと同じ。
落ち着く香りもいつもと同じ。
顔も間違いなくゆうちゃん。
でも、何か、変。
「わからない。
ゆうちゃんだけど、ゆうちゃんじゃないみたい。」
「他に、何か覚えていたりする?」
覚えているのは、ゆうちゃんが大好きで、ゆうちゃんに会いたかったこと。
撫でてくれる手が温かいこと。
会えなくなる前のゆうちゃんが怒っていたこと。
「キミが小さい頃に会ってるのかな?
でも、最近無くした定期を持ってたし…。」
小さい頃……そうだ!
「小さかったんだ!」
いつもゆうちゃんを見上げていた。
変な感じがしたのは、ゆうちゃんの顔が近くにあったからだ。
結局、思い出せた自分のことは、それだけだった。
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