2人が本棚に入れています
本棚に追加
現代
「あの日はね、嫌なことがあったの」
そこで話すのが止まると、少し困った様な微笑みを浮かべ、再度話し出した。
「親にね、引っ越さなきゃって言われてね。」
「小さい時に親からこの街を離れなきゃって説明されてね。今ならそれほどでもないけど、あの時は友達と会えなくなるって思ったら、ホントに寂しくて悲しくて」
「ほら、今なら連絡手段あるし、大きくなったから会いに行くこともできるし」
「だから、あの時は親に当り散らして家から飛び出して行ったの」
「そして、道で転んでしまって、泣きながら歩いて、あの公園のベンチにたどり着いて」
「そしたら貴方が現れた」
「その後は貴方の知ってる通りで」
「その日の後の数日間、貴方がまたあの公園に現れると思って通い詰めた」
「けれど、貴方は、結局来なかった」
曖昧な記憶だが、確かその頃はまりにはまったゲームがあった筈。多分戦友と共にゲーム三昧の日々で公園へ行かなかったのだろう。
「それを幼心で、きっと彼は遠くから来ていたのだと、勝手に思い込んで」
「ならば、先日の引越しの話で遠くに行けばまた会えると、考えて」
彼女はまるで他人事の様に優しくクスリと笑った。
「そんな筈ないのにね」
最初のコメントを投稿しよう!