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逡巡して何も思い付かないので、
「この間ねぇ、お母さんとスーパーに買い物に行った時に」
取り敢えず、くだらない笑い話を語ってみる。
泣いてるのを、笑いに変えれば良いかな、と、安直な考えで語り続ける。
暫く一人語っていると少女は徐々に顔を上げ、ゆっくりと笑顔が増えていき、段々と笑い声が大きくなると、気付けば僕の一人語りは会話になっていた。
そして笑い声の大きな会話にいつの間にか夢中になり、辺りは朱く染まっていた。
「そう言えば」と、思い出した様に自分の名前を告げると同時に18時を告げる市内放送の音が響きわたった。
「やば、こんな時間か!お母さんに怒られる!」
叫ぶように声を出し、ベンチから立ち上がると女の子に「ごめん、かえんなきゃ」とだけ声を掛け、走り出した。
女の子が慌てて自分の名前を言ったが、少年の耳には届いていなかった。
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