私と

11/12
前へ
/13ページ
次へ
現代 「あの日はね、嫌なことがあったの」 そこで話すのが止まると、少し困った様な微笑みを浮かべ、再度話し出した。 「親にね、引っ越さなきゃって言われてね。」 「小さい時に親からこの街を離れなきゃって説明されてね。今ならそれほどでもないけど、あの時は友達と会えなくなるって思ったら、ホントに寂しくて悲しくて」 「ほら、今なら連絡手段あるし、大きくなったから会いに行くこともできるし」 「だから、あの時は親に当り散らして家から飛び出して行ったの」 「そして、道で転んでしまって、泣きながら歩いて、あの公園のベンチにたどり着いて」 「そしたら貴方が現れた」 「その後は貴方の知ってる通りで」 「その日の後の数日間、貴方がまたあの公園に現れると思って通い詰めた」 「けれど、貴方は、結局来なかった」 曖昧な記憶だが、確かその頃はまりにはまったゲームがあった筈。多分戦友と共にゲーム三昧の日々で公園へ行かなかったのだろう。 「それを幼心で、きっと彼は遠くから来ていたのだと、勝手に思い込んで」 「ならば、先日の引越しの話で遠くに行けばまた会えると、考えて」 彼女はまるで他人事の様に優しくクスリと笑った。 「そんな筈ないのにね」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加