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登校後のHR前
「俺、好きな子が出来た」
そう語る男子は、僕の前の席に勝手に座ると、体を横に向け顔だけをこちらに向けて話しかけてきた。
前の席に陣取るヤツは僕のクラスメイトであり、戦友(オタク仲間)であり、幼馴染であり、親友だ。
この幼馴染は成績優秀、スポーツそこそこななかなかの超人であり、交友関係も広い。
そして、顔もイケメン。
……とはならず、顔面偏差値は普通を指していた。
まぁ唯一の汚点としてあげるとすれば、オタクという点くらいか。
しかし、高能力且つ多くの友人を作れるような性格の為、そこそこ異性から好意を寄せられている。
『セレブと結婚し玉の輿を!』とか『某アイドル並みじゃない顔は論外』とか言っているドリーマーな女子以外、リアリズム系女子の半数程がこの幼馴染のことに好意を抱くか、かなり意識しているようだ。
だが幼馴染の彼は、一度も彼女を(ゲーム内以外で)作ることなく高校2年の現在まで過ごしてきた。
しかし、そんな彼についにリアルで春が訪れようとしていた。
「おお!で、お前が惚れた子は誰なんだい?」
そう質問する僕は、特に特徴も無く、成績は学年中間辺りを上へ下へ、スポーツは嫌いじゃないがそれなりに好きな程度であり、出来るか出来ないかなら出来なくはない。
そして顔は自分じゃ平均値...だろうと思っている。
「ほら、2年から転校してきた子、いるじゃん?あの子だよ」
彼が言う転校してきた子は、4月始め、僕らがめでたく2年生として開始した初日にやって来た。...らしい。
らしいというのもその転校生は、
「おろ?その子って別のクラスに入ってきたって噂の子でいいんだよね?」
僕と幼馴染が過ごすクラスとは別のところへと入ったのだった。
「そう、多分お前が想像している子であってる」
「どこであったのさ」
普通に過ごしていれば、他のクラスの人間と新しくよろしくすることなど、まず無いはずだ。
あったとしても、合同授業くらいだろう。
その為にこの幼馴染と噂の転校生が知り合っていたとは驚きであり、自然と湧き出た疑問だった。
「いやな。昨日は別々で登校したじゃんか。その時に」
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