私と

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僕と彼の家は1軒家を挟んでのご近所。 (間の家は50代の夫婦で、お子さん達は既に家を出て働いている) なので物心ついた際には、既にこの幼馴染と時間を共有していることが多かった。 新作ゲームが出ればお互いの家を行き来したり、どちらかの親子が旅行の計画を立てれば、もうひとつの親子も時間を合わせ共に行ったりと。 先程クラスメイトであり、クラスメイトであり、戦友(オタク仲間)であり、幼馴染であり、親友であると言ったが、そこに家族である、と加えても誇張ではない気がする。 (これで、お互いの親が今の土地に住むまでは知り合いですらなかったらしいのだから、尚の驚きである) 小中高と同じ学校に通っているが、可能ならば毎日共に登校している。 しかし、昨日の朝はこの幼馴染が珍しく寝坊した為に、僕一人一足先に登校したのだった。 「何とか先生が教室に来る前に、席についていようと思って走ってたら、校内でこけちゃったのよね」 「真面目さが仇となったのか。しかし真面目な癖に廊下を走ったのか」 「そしたら、たまたま近くを歩いていたのがその転校生さんで、『大丈夫ですか?!』なんて声掛けながら寄ってきてくれて、倒れている俺に手を差し出してくれて」 「ほほお」 なんと、2次元世界ではベターな展開。 「見ず知らずの俺に優しくしてくれるなんて!ってことで」 「好きになっちゃったと」 「YES」 照れることなく僕の言葉に強く頷いた。 昨日教室に駆け込んでくるまでにそんなドラマがあったとは驚きだったのだが...。 「お前ってばそんな惚れっぽかったのか」 転んでしまったところに優しくされるだけで惚れるとは。2次元の嫁はかなり吟味している癖に。 この事実を女子に広めれば、ありとあらゆる手段でこのモテ男を転ばせようとするかもしれない。 ...いや、そこまで積極的で攻撃的な子はこの学校にいないか。
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