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「皆、いなくなっちゃったね」
彼女はそう言うと深くため息をついて視線を下に移す。
静かな瞳をしていて、どこか人間らしくない。不思議な子。
今日は卒業式。悲しくて切なくて、どんなに願っても時間という
のは残酷で必ずその別れはやってくる。
今日がその時だ。皆が最後の言葉を交わして涙を流して、自分がずっと過ごしてきた場所を離れてこれからはその場所を眺める事しかできない。
でも、だから俺は彼女を誰もいない教室に呼んだんじゃない。
最後だから、「好き」とかそんな単純な作業を行いに来たんじゃない。
今日は、言わなきゃいけないんだ。彼女に。彼女のために。
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