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教室にその子はいた。
クラスメイト達が別れの言葉を書き散らした黒板の前に、目を腫らし、今日で最後になる制服に身を包み、立っていた。
「桜」と、俺はその子の名を呼んだ。
「春木くんどうしたの? 教室に忘れ物?」
「ううん、お前を捜してたんだ」
「私を?」
そう、やっと見つけた。
「3年間」
「え?」
「高校生活、あっという間だったよな。入学式の日お前が駅に鞄忘れたのをダッシュで俺が取りに行った事が昨日の事みたいだ」
「あの時は……高校生活頑張ろって空回りしちゃってうっかり。コホン、でもそうね、まるで昨日の事みたい」
「あれから色んな事があったよな」
「そうだね、楽しかった」
「けどそんな楽しい時間も今日で終わりだ」
「うん、卒業だもの」
そう、卒業――別れと始まりの日。
「だからこそ今、桜に伝えたい言葉があるんだ」
そして俺は思いを告げた。
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