記憶喪失

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「記憶喪失」  「私は誰?ここは何処?」  昔の芸人のギャグの様なセリフが頭を過ぎる。  何かを思い出そうとしても、何も出て来ない。  体も思う様に動かない。  頭の中でモーター音が、耳鳴りの様に響いている。  何が起こった?  レースのカーテン越しに見える様な人影が、覗き込む様に、こっちを見ている。  誰だ?  コーヒーを飲みながら、首を傾げてる。  こっちにも、コーヒーよこせよ。  近づいて来て、顔を撫でた。脳みそを、くすぐられた気がした。  何か、映像が浮かんだ、青空と草原。  自分に関わる物か、判断は出来ない。  また顔を触った。  今度は気を失った。  五分で気が付いた。  何故か時間は正確に判った。  耳鳴りは治まらないし、体も動かない。  違う映像が浮かんだ、ただの四角だ。  それが何なのか、やっぱり思い出せない、思い当たらない。  コーヒーをすする、コイツが何者かも思い出せない。  こいつ、誰だよ。  ハンバーガー、こっちにもよこせよ。  ピザの映像が浮かんだ。  ピザの宅配を頼もう。  二十五分で到着。カードで落としたから、受け取るだけだ。  首傾げてないで、ピザはこっちによこせよ。  こーなったら、今度はすしだ。  アイツとこっちの二人前。ペイカード残量も大丈夫だ。  三十分で到着。  ビックリしてないで、二人前あるだろ、一人前はこっちによこせよ。  人を呼んで、ピザとすしを二人で食べ出した。  笑いながら、すしめしの米粒がついた手で、顔を撫でやがった。  気が遠くなりながら、あいつらの会話が聞こえた。  「過去に使ったデリバリーデータで、インターネット宅配を頼んだ様だ、このままじゃ、破産させられてしまうぞ。」  「暴走して自分を人間と勘違いした人工知能の記憶喪失なんて、前代未聞だな。」 おわり
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