第15章 三角を完成しよう

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それより理解できないことが多すぎて、頭が一杯一杯だ。 「謝ってもらう必要なんか一個もないけど。むしろ菜摘の方こそ大丈夫なのか。彼は怒ってる様子とかないの?お前、浮気したって責められたりはしてないのか」 声の感じからすると、ただ慌てているだけで憔悴した様子ではないが。 「そういう発想のない人だから…。大体、怒ってるんなら、隣に住めば?とか言わなくない?」 俺もそこがよくわからない。 そう言ってくるってことは、どういう理由かは不明だが、俺と菜摘が付き合うことを認めてる、みたいに聞こえる。もしそうなら勿論俺にとって不満などない。謹んでありがたく菜摘を引き受けさせて頂く。 でも、じゃあ何で『隣の部屋』なんだ?自分は身を引く、ってことなら、何も隣でなくたっていいわけだよね?それともやっぱり菜摘を大切に思う気持ちは残ってるから、彼女を俺がちゃんと幸せにしてるかどうか監視したい、ってことなのかな。 だとしたら、俺がどんなに菜摘を大事にするかをきちんと伝えて、そんな必要はないことを納得してもらおう。 菜摘は尚も心配でたまらないようで、 「ついていっちゃ駄目だって言われてるんだけど、こっそり何処かに隠れてようか?あの人他人とのコミュニケーションに慣れてないから、新崎に何か失礼なことがあったら…」 といても立ってもいられない様子だったが、俺は大丈夫だよ、と言って宥めた。 「お前の彼氏なら俺にとっても彼氏、じゃなかった、身内も同然だ。何言われてもどんな反応されても失礼だなんて思わないよ。以前よりはそういうタイプの人に対して理解もできてるつもりだし」 そう言って、ちょっと考えて岡野の身内に似た傾向の子がいることを教えてもらったことを伝える。 「だから、普通の人間の目から見たら不思議に思えることでも、本人にとっては必然性があることだって推測できるから。俺のことは心配しなくていい」 それより不安なのは、普段他人と殆ど会話もしないという彼が言いたいことを、この俺がちゃんと掬い上げられるかってところなんだけど。単にじーっと黙りこくる彼の向かいに座ってわけもわからず時間を潰すことにならないだろうか…。 まぁ、あれこれ思い悩んでも仕方ない。菜摘と俺の未来のため、少しでも前進することになれば。と、待ち合わせ場所に到着した冒頭部分に戻るのだが。 店内に殆ど客はいない。日曜日だし、大学の人間も今日は少ないだろう。
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