第一章 科学者の少女

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 味気ない真っ白な壁の廊下。アジア及びヨーロッパ連合国軍日本支局である。  外は秋晴れだというのにこんなとこにいたらまるで意味が無い。ここにいる人々はほとんどがため息ばかりついていた。  無理もない。ほとんどが強制的に全国からつれてこられたのだ。またいつ襲撃があるかも分からないこの状況でひょうきんに振舞える者は誰一人いなかった。  起床の時刻となり、ちらほら人が見える。臼田ハクトも寝起きで目を擦りながら味気ない廊下を歩く。そこまではいつもと同じだった。  突如、廊下全体が真っ赤に染まる。一瞬燃えたのではないかと錯覚するほどだった。白い壁に赤色灯の光が反射しているのだ。 「緊急事態、緊急事態。大尉、少尉は五階ミーティング室へ集まれ。他の隊員も出撃の準備が出来次第ミーティング室へ集まれ」  今まで食堂に向かおうとしていた者たちが皆、階段へ向かって走り出す。ハクトも血相を変えて走り出した。  早く向かわなくては。  ミーティング室には既にトスクカン大尉や黒城少尉など、軍の司令官たちが勢ぞろいしていた。
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