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二人はこれまで冒険してきた世界を回っていた。一度行った場所には何度も行けるテレポートでネス達に行けない場所はない。長い苦労があったからこそではあるが、少し世界が狭く感じた。
「結婚だってさ」
一番の観光地であるサマーズの砂浜を歩きながら、なんの脈絡もなくポーラは言葉を投げかけた。おそらくさっきのジェフの話を触れているんだろう、とネスはすぐに察した。
「ジェフは想像力が豊かだね」
「私がネスに抱きついたの見られてたからかなぁ」
ポーラは旅の間、恥ずかしげもなくよくそんな事をしてきていた。ネスはそれを思い出して少し恥ずかしくなった。
二度目に訪れるさまざまな街には多くの冒険の思い出が刻まれていた。全ての出来事がまるで昨日の事のように思い出された。二人は思い出話に花を咲かせていた。
「こうやって二人きりで歩いてると、時間が遡ったように感じるね」
別れの時が近くなるにつれ、ポーラの言葉がだんだん感傷的になっていった。
「初めて出会った時、ポーラは囚われのお姫様やってたね」
「好きでやってないわよ。幼い少女を監禁するなんて、いい趣味してないわ」
ポーラの切実な呼びかけに導かれて危険なグレープフルーツの谷を越え、怪しい宗教団体に単独で乗り込んで行った。仲間を助けるためと思えば何て事はなかった。
「その後もまた閉じ込められたんだっけ。ポーラにとっては閉じ込められてばかりの冒険だったんじゃないかな」
一難去ってまた一難。スリークに着いたかと思えば、幽霊達に騙されて再び投獄。今度はネスも檻の中だった。ジェフが来てくれなければどうなってた事か分からない。
「 あの時は一人じゃなかったから寂しくなかったわ。むしろ狭い部屋で二人きりなんて、私ゾクゾクしちゃった」
「そんな呑気なこと言ってられる状況だったかね……」
冗談ではないように聞こえるのがまた怖い、とネスは苦笑した。
思い出話は尽きる事がなかった。しかしいくら話しても話し足りない気がした。何か大事なこと、核心に迫ること、何も語り合えてない。でもネスには自分が何を話したいのか分からなかった。
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