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それは、桜が咲き始めた
春うららかなとある日のこと…――
「う…いててて……」
この日、俺は激しい後頭部の痛みと
グワングワンと揺れるような眩暈に、目を覚ました。
うえぇ…なんだこれ気持ち悪い…
っていうか、何でこんな頭痛いんだ…?
昨日酒飲んだっけ?
……っていうか、あれ…?
思い出そうとするも、いつの間に寝たのか
自分が何をしていたのかハッキリと思い出せない。
……。
あれぇ……? なんか記憶飛んでる……?
喉まで出かかった言葉が出て来ない時みたいな
なんとも妙な気味悪さを感じつつ、
俺はゆっくりと上半身を起こした。
その時だった。
「すー……」
規則正しい寝息と、ひざ下のあたりに感じた重み。
――……。だ…ダレッ!?
それが人間であると認識してから、
ワンテンポ遅れて俺の体が反射的に跳ね上がり
寝息の主が目を覚ます。
「ん……っ」
「………?」
「……。…あっ……ようちゃん!」
寝ぼけ眼をこすりこすりして、俺の顔をじっと見つめたかと思うと
寝息の主は突然ガバリと俺に抱き付いてきた。
「えええ!?」
「ようちゃーん! よかったぁ!
ちゃんと目覚ましたぁぁぁぁ!
あのまま起きなかったらどうしようかと思ったよぉぉぉ…!!」
えええ~!?
何コレどうなってんの?
なんで女の子に抱き付かれ…!!?!?
女の子とハグとか、人生初体験なんですけど!?
しかもこの子メッチャ胸でかっ!
って、ちがーう!
今大事なのは、そんなことじゃなくて…――
「き…君、誰!!?」
「…え……?」
ものすごい勢いでしがみついてくる彼女を引きはがし
単純かつ最も気になる質問を投げかける。
すると彼女は、正体不明の宇宙人が幽霊でも見たように
ハッと息を呑んで顔をこわばらせて…
俺が全く、微塵も想像していなかった言葉を発した。
「わ、私…ようちゃんの奥さんだよ…?」
ぐすんと鼻をすすると、
彼女の大きな瞳にはジワジワと涙が溜まっていく。
「お…? う……」
うそだろぉぉぉぉぉ~!!?!?
ある朝目覚めた俺に、
見ず知らずの「奥さん」が誕生した瞬間だった。
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