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「死ぬまでだ、バカ!」
そこそこイケメンな顔を歪ませるほど、強く蹴り上げてしまったのか....、かと先は追いかけることなかった。
体育館裏まで来ると、呼吸を落ち着くために胸に手を当てた。
「ははは、女じゃん」
乾いた笑い声、呆れた笑い声。少し膨らんだ胸は自分を女と再認識させた。
「そうだよ、女だよ」
自分の胸ぐらを掴み、座り込む。
「俺は女なんだよ、玲(あきら)」
それがどんな風な声色なのか、誰も知ることはない。消え入りそうな声なのか、泣きそうな声なのか.....。
自由が利かない。体が動かない。沈んでいく。
体全体を包むような不思議な感覚を感じながら、呼吸をしてないことに気づいた。
いや、呼吸ができないのだ。
意識がはっきりした瞬間、体の神経が戻ってきた。自分の体が死のうとしていたのを感じ、恐怖が湧き出た。
必死に上へと水を掻き分け、光が見えてきた。手が空気に触れた時、救われた気がした。
顔が水面から出た瞬間、辺りは暗くて、雨が降っていて、川が氾濫していた。急に体が流されそうになって、必死に川岸を探した。
「_________ぃっ」
微かに声が聞こえた。けど、水の勢いが凄すぎて位置が把握できないでいた。また、体が水の中に引き込まれる。足が引っ張られる。
水の中は暗闇で静寂が広がってた。
あぁ、この感覚は前にもあったな。
『玲(れい)!』
3年前の貴方の声が聞こえた。
体がまた水面へと出た。今度はしっかりと人の声を耳にし、そこへ向かって泳ぎ始めた。
「こっちだぁ!」
伸ばされた手を掴み、体が地上へと出た。また、呼吸ができなくなっていた。酸素を求める呼吸は荒々しく脳まで酸素が足りてない気分だった。
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