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 親愛なる夏目先生。  あなたを愛した木曜会は、平成のこの世の中にも受け継がれております。    *  時代を感じさせる白壁の洋館。校内にこんな場所があるなんて知らなかった。あたしは確かに心をときめかせながら中に入ったけれど、その一室は無機質なものだった。  スチール製の棚には本やファイルが溢れていたし、職員室と同じような机の上にはハサミやら筆やらで散らかって見える。  だけどあたしはその場から立ち去ることなんてできなかった。これから素敵なことが起きる予感がしたのだ。  そこには恐ろしく顔の整った男の人と、彼の前には黒いもやがかった本があった。
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