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あたしたち五人は外に出た。きっと今ごろ、あの二人は両想いになっているんだろう。
あたしがほくほくしていると、翼くんが玄関を背にずるずるとへたりこんだ。
「翼くん!? どうしたの!?」
翼くんは膝を抱えてしまっていて、その表情は見えない。
あたしが焦って翼くんの肩に触れようとすると、先生が翼くんの隣にどっかりと座り込んで頭をがしがし撫でた。
「よく頑張ったな」
それがスイッチだったのかな。翼くんの肩が震えだした。泣いている……?
「……ぼく、ぼくもあさみちゃんのこと、好きだった……。でもお兄ちゃんも、お兄ちゃんと一緒にいるあさみちゃんも、好きだったんだ……!」
そっか。そういうことだったんだ。
つらいよね。どっちも大切だもん。お兄ちゃんか、あさみちゃんか、選ぶのはきつかっただろう。言霊が憑いてしまうのも仕方がない。
あたしは先生とは反側の翼くんの隣に座りこんだ。
「翼くん、すごくかっこよかったよ」
そう言って背中を撫でると、泣き腫らした顔があたしを見た。
「ほんと……? ぼく、ちゃんとできていた……?」
「もちろん。二人のことを想える翼くんは、強い人だね」
笑顔でそう言うと、翼くんの顔が歪む。ありゃ、泣かせたいわけじゃないんだけど、これはしばらく止まらなさそうだ。
「ありがとう……。みちるちゃん、優しいね」
上目づかいであたしを見上げる翼くんは、泣き笑いだ。あーもう可愛いなぁ。最初に会ったときはナマイキな子と思ったけど、可愛いところがあるじゃないか。
あたしたちはそうやって、いつまでも翼くんを撫で続けていた。
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