二 行人

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 あたしたち五人は外に出た。きっと今ごろ、あの二人は両想いになっているんだろう。  あたしがほくほくしていると、翼くんが玄関を背にずるずるとへたりこんだ。 「翼くん!? どうしたの!?」  翼くんは膝を抱えてしまっていて、その表情は見えない。  あたしが焦って翼くんの肩に触れようとすると、先生が翼くんの隣にどっかりと座り込んで頭をがしがし撫でた。 「よく頑張ったな」  それがスイッチだったのかな。翼くんの肩が震えだした。泣いている……? 「……ぼく、ぼくもあさみちゃんのこと、好きだった……。でもお兄ちゃんも、お兄ちゃんと一緒にいるあさみちゃんも、好きだったんだ……!」  そっか。そういうことだったんだ。  つらいよね。どっちも大切だもん。お兄ちゃんか、あさみちゃんか、選ぶのはきつかっただろう。言霊が憑いてしまうのも仕方がない。  あたしは先生とは反側の翼くんの隣に座りこんだ。 「翼くん、すごくかっこよかったよ」  そう言って背中を撫でると、泣き腫らした顔があたしを見た。 「ほんと……? ぼく、ちゃんとできていた……?」 「もちろん。二人のことを想える翼くんは、強い人だね」  笑顔でそう言うと、翼くんの顔が歪む。ありゃ、泣かせたいわけじゃないんだけど、これはしばらく止まらなさそうだ。 「ありがとう……。みちるちゃん、優しいね」  上目づかいであたしを見上げる翼くんは、泣き笑いだ。あーもう可愛いなぁ。最初に会ったときはナマイキな子と思ったけど、可愛いところがあるじゃないか。  あたしたちはそうやって、いつまでも翼くんを撫で続けていた。
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