三 彼岸過迄

2/16
55人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
 抜けるような青空が、窓の外に広がっている。入道雲とのコントラストが眩しい。きっと外ではセミの声が鳴り響いているんだろう。ここではクーラーの静かなモーター音しかしない。  あたしは足を組んで、テーブルに頬をついて言った。 「ふっ……帰りたくない」 「いや帰れよ」  先生にスパコーンっと頭を叩かれた。  いったーい!!  夏休みである。  午前中の課外授業を終わらせて、入り浸るは資料館。だってー、この炎天下の中を汗水垂らして帰りたくないじゃん。資料館はクーラー効いているし。  木曜日の本日。ギャラリーでお弁当食べていると、先生がやって来た。なんでも毎週木曜日は先生も柳井堂はお休みらしく、午前中はゆっくりしてから資料館に来るとのことだ。言霊祓いは仕事じゃなくボランティアみたいなものだから、時間とかは決まっていないらしい。  少しでも長く一緒にいられたらなーと思わなくもないけど、夏休みな分、いつもよりは長い。へへ、嬉しいな。 「ねー先生ー、どっか連れていってよー」 「嫌だ。なんで小娘を遊びに連れていかないといけない。それに俺は仕事だ」 「えっ、夏休みないの?」 「あるわけない」  そっかー。社会人は大変だな。  でも遊べないのか。残念。 「まぁあたしたちも課外授業とか文化祭の準備とかで忙しいけどね」  夏休みが明けたらすぐに文化祭だ。どのクラスもその準備に追われていて、課外授業が終わってからも残っている生徒が多い。 「そっか。もうそんな時期か」 「そうだよー。先生もこの学校だったんだよね? なにやったの?」 「二年のときは、プラネタリウムをやったな」 「えっ、なにそれすごい!」  そんなことできるの? どうやったんだろう? 見てみたかったなー。 「お前らはなにをするんだ?」 「ステンドグラスもどきだよー。好きな本の一場面をこう、箱とフィルムで作って、中に電球を入れて影絵みたいなステンドグラスにするの」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!