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髪にキス。
毎週日曜日。天気の良い日。
日当たりの良い奥のテーブル席。
俺がこの喫茶店で働く以前から、来てくださってるらしい。
今日も、彼は。
「いらっしゃいませ」
あー、あったかい。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
すごく眠い。
「店長、コーヒーふたつ」
「ん、寝るなよ」
「寝ませんよっ」
今日も平和だ。
「コーヒーのおかわり、いかがですか?」
店内をぐるっとまわる。
(最後は……)
目の先には。
常連さんがいるテーブル席。
いつも窓の外を眺めている、彼。
けど、その姿が見えない。
(あれ、今日は……いや、)
来店した姿は見た。
手洗いにでも行ったかな、と思いながら彼の席に向かう。
と、黒いもじゃもじゃがテーブルに沈んでいた。
(……珍しい………それに、すごい体勢)
首とか腰とか痛くないのか。
ふと、店内のクーラーの風にふよふよ吹かれるネコっ毛に目が移る。
(柔らかそう……)
惹かれるままに上体を倒す。
(………やっぱり)
もふもふを唇と鼻先に感じ、はた、と気づいた。
(……。!?な、なに、やって)
ばっ、と離れ、カウンターへ逃げる。
(え、なに、なに、おれ、え、)
「……ふ、ぁ………ん、? なんか、髪に……気のせい?」
髪にキスなら思慕。
2016年 3月 3日
2016年 3月 11日 校正
2016年 4月 7日 校正
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