注がせてください、あふれるまで

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   ああ……そいつ、よっぽど彼女の事、好きなんだろうな。 多くの人が行き来するホームで泣けるぐらい、気持ちがいっぱいいっぱいだったんだろうな……。 好きで 好きで めちゃくちゃ好きで 気持ちが溢れるぐらい好きで。 離れるのが決まってるのに、 離れたくなくて、 自分の感情だけじゃどうする事も出来ないのがもどかしくて、 それでも、別れ際に恋人の顔を見たら、 もう暫く会えなくなる事が分かってて、 「じゃあ」という、別れの言葉を切り出せなくて…… 『泣きたい』 なんて、自分では思ってなくても、自分の意志とは関係なく、涙が出たんだろうな…。 辛い、だろうな……。 その気持ちは、痛いほどよく分かる。 ただ、その彼と俺とでは、大きく異なる所が二つあった。 一つは……俺の場合は、恋人同士ではなかったこと。 そしてもう一つは……さよならした相手が、女ではなく、男だったこと。
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