注がせてください、あふれるまで

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   彼が彼女と手をつないだ瞬間、照れくさそうに笑った顔が、一瞬だけちらりと見えた。 それは……普段、感情をあまり顔にださないあの人からは、想像がつかない顔で--何故か、心の奥がきゅっと締め付けられた。 あの人、あんな顔もするんだ……。 なんて、頭は冷静なつもりだった。 けれど、魚の小骨が刺さったかの様に、胸の辺りがチクチクして、もどかしい。 今でも、あの時の彼の顔と、感じたもどかしさは、忘れられないでいる。
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