終章 大団円とはほど遠い

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 最近になって、叔父伝手に近頃の久美刈村の様子を知った。  道村村長はなんとか元気を取り戻したらしい。しばらくは現役を続行しながら、いずれは選挙を行って次の者に村長の任を譲るという。犬飼養太と天宮百合子の二人はよろしくやっているそうだ。幸せになってほしいと思う反面、なんだか心の奥底でムカムカとした気持ちが湧きおこっている。  三峰家は悲惨である。当主三峰シズ子は急逝した。泰介が亡くなって心を痛めていたところに、今度は陣本の服毒死だ。もしかしたら、彼女は事の真相に勘付いてしまったのかもしれない。孫娘が連続殺人犯であるという事実に耐えきれなくなったのではないか。当の本人が亡くなった今、その虚実を確かめることはできない。  光圀と涼子の二人は離婚した。村では驚きよりもやはりなという声のほうが多かったらしい。僕でも二人の仲が冷めきっていることが容易にわかるほど、二人の間には大きな軋轢が生じていたのだ。家を出たのは光圀のほうだった。涼子は旧家というものに依然として執着しているらしい。殺人犯にして箱入り娘の紗耶は、当然の如く父に着いて行った。三峰の屋敷には、年増女と数人の使用人だけが残される形となった。  対馬靖彦は、そのなかには含まれていない。
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