終章 大団円とはほど遠い

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『 拝啓 進藤ハルヒト様  春の訪れまで、まだいくらか日があるようです。進藤さんはいかがお過ごしでしょうか。きっと学生生活を謳歌されているのだろうと思うと羨ましく思います。  進藤さんのご住所は、堤さんに窺って知りました。とつぜん手紙を送りつけるようなことをしてしまい、もうしわけございません。  私は今、父と共に久美刈村から少し離れた街で暮らしています。父に大学へ行ってみたいと申しあげたところ、二つ返事で了承してくださり嬉しい気持ちでいっぱいです。百合子とは一学年離れてしまいますが、それも致し方ないことですね。  進藤さんと松田様のふたりが、警察に何も告げずに村を去っていったことに、たいへん驚きました。証拠がないにせよ、おふたりの語ったことは完全に当たっていました。私はたいそう肝を冷やしました。  今は、それは私に機会を与えてくれたのだと思っています。生き直す機会。反省する機会。  村で何があったのかをここに記します。
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