終章 大団円とはほど遠い

6/8
前へ
/519ページ
次へ
 祝宴会場での一幕をご記憶でしょうか。 私と壱屋様の祝宴です。おさっしのとおり、あれは私にとって望まぬものでした。けれども母と祖母に押し切られ、強引に結婚することになったのです。  祝宴会場で、泰介さんが壱屋様を殴りましたね。あまりのことに私は恐怖を覚えました。壱屋様が会場を出ると、泰介さんもまた出て行きました。私は心配になって、泰介さんのあとを追ったのです。  屋敷を出たところで、彼に追いつきました。話があるといって、彼は私を裏庭に連れ出しました。壱屋様とのことを、泰介さんは納得されていなかったのです。あたりまえですよね。  何をお話したかは覚えていません。互いに興奮していたのです。そのうち、私はその場を去ろうと彼に背を向けたのです。  すると、泰介さんが私に襲いかかってきたのです。私は土の上に倒れこみました。彼が何をしようとしているかはすぐにわかりました。私達の関係は、まだそこまでには至っていなかったのです。  私は抵抗しました。けれど、いくら手足をばたつかせても拘束は解けません。その時、私の手に石ころが触れました。私はそれを手に取ると、彼の頭にめいいっぱいの力を込めて打ちおろしました。  彼は呻き声をあげて、拘束を解き倒れました。  私は襲われた屈辱、恐怖、そして怒りに支配されていました。土の上に倒れ伏す泰介さんに、私は殺意を抱いたのです。このまま彼を置いておいてはまたいつ私に身の危険があるかわかりません。
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加