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私は、首に巻いていたあの黄色のストールを外すと、思い切り力を込めて、彼の首を締めあげました。泰介さんは抵抗らしい抵抗ができませんでした。うつぶせに倒れる彼に馬乗りになっていましたし、まだ私に殴られ痛みも残っていたからでしょう。
どれくらい経ったかはわかりません。息絶えた泰介さんを呆然と見ている私に、声をかける人がいました。陣本さんです。
彼は状況を把握すると、あとはなんとかしますと言って、私を逃がしてくれました。
後日、彼が何をしたかを聞きました。おふたりがおっしゃったままのことを、数時間のうちにこなしたそうです。
これですべて終わった。そのときは、そう思いました。けれどもそれは間違いでしたね。
年も終わるころに、進藤さんが友人を連れて村に戻ってきたと聞いて、なんとも不穏な気持ちになりました。それは当たっていました。事件を嗅ぎまわっているらしいと、陣本さんが私に切迫した顔で伝えてきた時、私はとても当惑しました。そして、二人が屋敷までやってきて事件を調べているとおっしゃった時、もうダメだと思いました。あの時、二人は共犯の可能性を示唆されていました。私には、すでに真相の一歩手前まできているように感じました。いずれ私に辿りつく。そう思った時、私に保身の気持ちが芽生えたのです。
陣本さんを殺そう。そう決心したのです。
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