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ひとまず、女をシェルターに運ぶ。まだ目覚める気配はない。
男は奥と言ったが、入り口も見あたらず、奥がどこなのかわからなかった。女を抱えたまま、壁づたいに歩くと突然目の前に亀裂が現れ扉が開いた。中は数人がしばらく生活できるようになっていた。女を簡易ベッドに寝かせた。
扉のあった場所に立つとまた開いた。机の上のマニュアル等すべて持ってシェルターに戻った。
目を通すと、シェルター内でセキュリティーを発動させるとわかった。リムーブを手に取る。三錠あった。裏返すとメモが貼ってある。
『三錠服用し眠りにつくと、理論上脳の機能をすべて停止させる』
どこまでもお膳立てしてくれているということか。親切な男だ。
人類にとって、どちらがよいかなど俺にはわからない。しかし過去の自分が何を望んでいたのかは理解できた。今の俺はなんの拘りももたない。
純粋に、自分を信じてやりたくなった。
カードキーを差し込む。
俺の顔に光があたる。センサーが虹彩を読み取っている。右手を指定された場所に置いた。
画面に現れた文字を読む。
「リムーブ」
声紋が一致した。
『In Operation』
文字が点滅している。
〈了〉
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