無始無終

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 言わずもがな、それは知能があるからだ。しかし、それでもまだ安心できない。  仮に、突然変異的にあるサルが人間と同等の知力を手に入れたとしたらどうなるだろうか。そうなれば、人間の持つ知能という唯一にして最大のアドバンテージは消失する。  二足歩行の彼らは容易に道具を手に取るだろう。その帰結を考えただけで身の毛がよだつ。楽園の蛇にそそのかされるのは、なにも人間だけとは限らない。   最近、話題になっているといえばドローンもそうだ。あんなもの恐怖の塊でしかない。 精巧なおもちゃのパーツや、家電製品の技術が軍事転用され兵器に化けることはままあるが、ドローンはその逆で言ってみれば軍事品の逆輸入だ。俺はあの娯楽品の皮を被った兵器におぞましさしか感じない。  ……。  脳内に反響する件の声がよりいっそう強くなった気がする。剣呑な響きである。耳を貸してはならない。俺は今、最大の恐怖にさらされている。
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