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・・・もはや男の手にはナイフは無い・・・。
刃物が効かないと分ったからには、男は両の手で鎌を持つ手を抑えようとするのみだ。
だが何故だ!?
何故マネキンが動いている? この感触、この冷たさ・・・このか細い腕・・・
何故折れない!?
白いコルセットで締められたウェストは、男の太ももより細いかもしれないのに!
「あ あ あ あ・・・!」
力の増加は既に止むことが無い。
もはやその力は男の限界を超えようとしていた・・・。
「・・・わ、悪かったぁ! 殺すつもりはなかったんじゃぁ! 頼むぅ! 許してくれぇッ!!」
文様のある鎌の刃は、既に男の咽喉の皮膚を切り裂き始めていた・・・。
男の首から溢れ始める鮮血が、一気に勢いを増す。
そして人形は、
男の耳元に最後の宣告をささやいた・・・。
「わたしの名は メリー
わたしは鎌を振るう・・・
汚れた命を絶つ・・・ために 」
マンションの下には、男の舎弟たちが集まっていた。
彼らが階下から階段を昇ろうとした時、
彼らの耳に、生理的な嫌悪をもよおす叫び声が聞こえた・・・。
彼らは大きな声を張り上げ、男の部屋の前にたどり着くが、
外されている換気扇・・・
鍵の閉まった扉・・・
チャイムを押すもの・・・
ドアを叩くもの・・・
携帯で必死に通話を試みるもの・・・
もはや全てが無駄な行為と言えよう、
彼らがドアを破壊し、部屋に入った時には、大量の血の海の中に・・・
頭部が切り離され、既に肉の塊となった男の死体が転がっているだけだったのだから。
・・・マンションの下では、ゆっくりとしたハイヒールの音が響いている。
「彼女」は小さく、はっきりした声でつぶやきながら歩いていた・・・。
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