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「あ? なんじゃい、お姉ちゃん、
この電話、誰に聞いたんじゃ? ・・・お?」
ツーッ、ツーッ、ツーッ・・・
通話はすぐに切れてしまったようだ。
「先輩、何すか?」
男は不機嫌そうに携帯を閉じる。
「分らん、『お客さん』かものぉ、ワシんとこには直接かけんことになっとるんじゃが。」
彼らの世界では、分業は徹底されている。
警察に捕まるリスクを最小限に抑えるためだ。
だが、彼らはまだ気づいてなかった・・・、
警察や同業の犯罪者より、もっと恐ろしいものに見つかったことを・・・。
その後、兄貴分の男は事務所のガレージから車を出し、
いつもと同じように自宅に愛車を走らせた。
走行中、
何の気なしにカーラジオをつけた時、男は奇妙なノイズに気づく。
『・・・道路状況です・・・国道○号線では、事故処理のため・・・ジジ・・・
キュィ~ン・・・』
「ん? 変じゃのう、このあたりの電波は、入りがええはずじゃが・・・」
その時、男は耳を疑った・・・。
ラジオのスピーカーから、聞き覚えのある声が流れたからだ。
『・・・もしもし、わたし・・・メリー 』
反射的に男はブレーキを踏む。
後ろの車が肝を冷やしたようだが、知ったことではない。
むしろ飯の種だ。
残念ながら車は無事だ、
だがそんなことはどうでもいい。
ラジオは、いつの間にか元の放送に戻っている。
携帯は鳴ってない、
着信の形跡もないようだ・・・。
なんじゃ・・・?
待ち伏せや闇討ちなど、彼らの世界では珍しくも何ともないが、
今起きている不可思議は、暴力的な匂いを何も感じさせていなかった。
それゆえ、まだこの男は落ち着いてたのだが、
自分のマンションに着いた時、男の心に恐怖と言うものが芽生え始めた・・・。
それは、自宅の電話に、一件の録音メッセージが残されていたから・・・
あの女の声で・・・
『わ た し メ リ -
いま・・・あなたのお仕事場にいるの・・・ 』
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