敗北の夜 (小嶋美智子)

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私たちは宿舎に着くと、十畳ほどの畳の部屋をあてがわれ、その部屋に五人で集まった。 そして、みんなが畳の上に腰を下ろしたとき、 清人が真っ先に口を開いた。 「みんな逃げようよ! 僕たちは、こんな場所にいたらダメなんだ。 あんな恐ろしい場所に、もう一度、行ったなら、僕たちはきっと死ぬよ……。 死ぬってわかっているのに、もう一度あの場所に行くのは間違っているよ」 「でも、それじゃ、久美子さんの死が無駄になるわ。 私たちがここから逃げたら、久美子さんが報われない」 留衣がそう言って、清人を非難した。
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