敗北の夜 (小嶋美智子)

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私はそう思うと、涙がポロポロとこぼれ落ちてきて、止まらなかった。 もしも、私があのとき転ばなければ、 誰も死ぬことなく全員が助かったかもしれないのに……。 「美智子、泣くな!」 私のとなりに座っていた章が、私の顔も見ないで、ポツリと言った。 「泣いてみても、余計に気持ちが沈んでいくだけさ。 沈んだ気持ちでいれば、正しい判断ができなくなる。 オレたちは、地獄に足を踏み入れたみたいだけれど、それでも助かる道は、きっとあるさ」 私は章にそう言われて、涙を拭った。 きっと悲しいのは、私だけじゃないから。 だから私は、泣くのを止めなくちゃ……。
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