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「あーゴメンなさいね、ウチのお店まだオープンしたばかりで今女の子募集中なんですよ!」
しのぶママはそう言いながら、マイクを持った客にわからないように本体のボリュームをさりげなく落とす。
「だってよ?ジュン!残念だったな?」
クスっと笑いながらヒロは
まあ気を落とすなと言った感じで俺の肩を叩く。
「べ、別にそんなの気にしてねぇよ!ママさんはいいひとそうだし、それに俺は酒が呑めりゃいいんだから!」
ヒロの回した肩の手を払いのけると頼んだツマミのポップコーンを頬張る。
「騒がしくてゴメンね?あの人達かなり酔っ払ってるわ」
別な男とチェンジして再びカラオケを歌い始める彼らから逃げるようにカウンターに戻って来たママは俺達の前で拝むように両手を合わせながら頭を下げる。
「まあまあ、そんな気にしなくていいですよ!それより女の子は本当に募集中なんだ?しのぶさんだけじゃ忙しい時大変じゃない?」
こういう時さりげなくこんな切り返しが出来るのはヒロの上手いところだ。
「いやいや、あれはウソ、本当は二人いるんだけど、ひとりは週2回だけでもうひとりは今少し風邪気味でね?今日は雨で大変だから休んでいいよ!って私が言ったのよ、もちろん他にまだ応募してくる子がいたらそれはそれで歓迎だけどね?」
しのぶママからするとあーいう酔っ払いはたまたま今日来ただけで次は来ないだろうと言った。
酔って初めて来て瓶ビールしか注文しない客というのはその後二度目というのは滅多にないらしい。
また来ようと思っているならボトルキープしたほうが次回から安く済むわけだからつまはそういうことなのだろう
経験してわかっているというしのぶママは元々は別の店で雇われていたのだと、その時
教えてくれた。
少し昔を思い出して懐かしく感じているような、それでいて何処か寂しげな目をしているこのひとは一体どんな苦労してきたのだろうか?
2話終了
3話へ続く
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