もう一度逢いたい君へ第3話

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しのぶママは先ほどの酔っ払いがようやく引き上げて行ったため、いくらかホッとしたようだ。 「本当やたら騒がしいひと達だったわね?あっ、でも別にカラオケがって意味じゃないからね?良かったらあなた達も何か歌って頂戴!ウチのカラオケ結構最新型よ?」 新しく作った水割りグラスの水滴を丁寧に拭きとりながら俺達の前に置くとニコリと微笑み洗い物を始めるしのぶママ。 やがて夜も11時を過ぎた頃だろうか、ヒロは少し酔って突然俺に絡んできた。 「なあ、どうでもいいことかもしんねぇけど、お前どうして未だにちゃんとした彼女作らねぇの?」 ヒロにはどうやら最近付き合い出した彼女がいるらしいが、俺には現在正式な彼女というものがいない。 もちろん女が嫌いというわけじゃないし、いい女がいたら一緒に飲んだり食事だってすることだろう、ただ、正式な・・つまりはお互いを束縛しあうような関係性にはちょっとだけ冷めていた。 というよりは(深い仲になる)ということに臆病になっていたのかも知れない。 だからやつの質問には答えたくはなかった。 黙ったまま目の前の灰皿で燻っていた吸い殻の上にグラスの中から氷をひとつ摘んでポトンと落とす。 ジューっという音を立てながら氷は溶けていく・・そして徐々に消えいく赤い火をじっと見つめていた。 (俺にとって恋愛がこのタバコの火なら今入れた氷は多分俺自身だな) やがてヒロのやつは赤い顔でトロンとした目つきになり今度は俺の左右の頬を両手でつまんでイーと横一文字に引っ張る。 「あはは、なあお前これで学級文庫って言ってみ?」 真面目なのかと思えば、急にこうやって小学生みたいなおちゃらけた行動に出るヒロは確実に酔っぱらっていた。 恐らくは今日の出来事なんて明日になればまるで覚えちゃいないだろう。 さっきの質問にマジに答えなくて良かったとそう思った。 「あーもうこいつダメだ、ママさんスンマセン、俺達もそろそろ引き上げます」 ヒロの手を払いのけると俺はしのぶママがグラスに注いでくれたミネラルウォーターを目の前の酔っ払いやろうの口に無理やり含ませる。 ふぅーと大きな深呼吸をするヒロ。 「おい、ヒロ早く立てよもう帰るぞ?」 「うるせぇな!まだ酔ってねぇよ、それより早くさっきの話の答えを聞かせろよ?」 「聞かせろって学級文庫か?」 わざとはぐらかす俺。
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