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「ちゃーう!その前だ」
「・・・」
「なあ、もしかしたらお前まだあのひとのこと吹っ切れてないんじゃないか?」
ヒロの言う(あのひと)とは
昔俺が付き合っていた5歳年上のひとのことをさす。
童顔だったその彼女は一緒に歩くといつも同い年か、彼女の方が下に見られることすらある。
とにかく笑顔が可愛いらしかった。
水道で手を洗う時に前もってハンカチを口に咥える彼女の仕草を横に並んでじっと見つめると照れくさそうに横を向いてしまうようなそんなシャイなところもまた可愛いかった。
だがそんな話も今となっては遠い過去だ。
ほんの数年前のことであっても俺の中ではもう完全に昔の出来事なのだ。
だからヒロのいう「吹っ切れていない」という言葉に関して言えば答えはNOだ。
しかしそのことでひとりの女性を深く愛するということに臆病になったのも事実ではあった。
まあ、彼女の話を始めたら今回の話が完全に別なものになりかねないからこれ以上はさし控えることにする。
ひとは時には語りたくない過去のひとつやふたつあるものなのだ!
「そんなわけないだろ!何年前の話してんだお前!」
ややムキになりながらヒロに怒鳴る。
と、その時だった。
カランと音を鳴らして扉を開けて入ってくる女性!
俺達は二人とも思わずそちらに顔を向けた!
コートを来たその女性と目が合うヒロ。
「あ、お前・・・」
続く
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