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気がつけば、時間はもう深夜1時近い。
本来ここの営業時間は0時までだ。
最終電車が無くなってまで営業する意味がないからそういうことらしい。
俺たちはママが後片付けするのを待って、全員で一緒に店を出ることにした。
「ねぇ、ラーメンでも食べていかない?今日は楽しかったから私のおごり」
しのぶママも最後のほうは少し酔っているみたいでユキヒロさんの腕につかまりながらそう言う。
「えーもう1時過ぎだよ?ママ何処かやってる店知ってるの?」と圭子が言う。
彼女はヒロの腕につかまりながら少しふらふらしていた。
「おいおい、お前大丈夫かよ?」
圭子と並んで前をいくヒロの後ろからひとりで歩く俺。
後ろからみたらまるで2組のカップルが並んで歩いているかのようだ。
店を出て駅前ロータリーまで来る。
ママの言うラーメン屋はこの先の線路沿いにあるらしい。
タクシー乗り場にはこの時間までとなるとさすがにもうひとの例は出来ていなかった。
前を行く2組のカップルから数メートル後を歩いていた俺は立ち止まる。
「悪い、やっぱ俺帰るわ」
「えー何どうしたの?具合でも悪くなった?」
立ち止まって振り返ると急に心配そうな顔でしのぶママが言う。
「いや、そうじゃないんだけど俺明日も仕事早いし・・」
「なんだよジュン、付き合い悪いな?」
「そうだぁジュン!付き合い悪いぞぉー」
ヒロが酔って少し寒そうにしている圭子の背中をさすりながら言うと圭子も同じように調子に乗る。
「俺のことはいいから気にすんな!それよかほら早く行けよ!彼女また風邪ぶり返しちまうだろ?」
両手でふたりをシッシッと追い払うような仕草をした俺は背を向けてジャンパーのポケットに両手を突っ込みタクシー乗り場へと走り出す。
雨があがったとはいえ三月の深夜はまだ冷え込んでいた。
そしてそれは俺の心の中と同じ寒さであった。
(そうか、ヒロが最近付き合い出した彼女ってのはきっとあの子のことだったんだなぁ・・)
タクシーに揺られウトウトしながらさっき見た光景が頭に焼き付いていた。
(でもなんだか少し可愛いかったなあの子・・)
一方皆んなに背を向けタクシー乗り場に向かうジュンの姿を目で追うヒロ。
「なんだあいつ、一体どうしちまったんだ?」
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