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「そろそろ時間だ。」
純白のスーツに身を包んだ男はそう声を掛けた。
黒板前では、少女が涙をポロポロと零している。
「……はい。」
「すまねぇな、俺がしてやれるのはここまでだ……。」
申し訳無さそうに男が苦笑すると、男の前に女が現れた。
「いえ、もう充分です。ありがとう……。」
彼らに気を止める様子もなく、少女は涙目で友人と話し続けている。
男も女も、少女には見えていないのだ。
「別れは済んだのか?」
「はい。アナタが期限を伸ばしてくれたおかげです。……こうして、娘の卒業式まで見る事ができました。」
「……では手を。このオレ、ノクターンがアンタを天までエスコートする。」
男はそう言って右手を左胸に、そして左手を女性の前に差し出して軽く頭を下げた。
「えぇ。」
女は穏やかな表情でその手をとる。
彼は天の使い。
浄い魂を来世へと繋ぐ案内を生業とする者__。
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