くたばれカルト教団

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 「真北省吾さん、我々はあなたの入信を歓迎します」  違和感。  真北が最初に感じたものはそれだった。女子高生を殺害して警察やメディアの目を逃れるように漫画喫茶の個室に身をやつしていたが、長くは持たなかった。 やがて隠れていることが見つかり、警察に執拗に追われ、都会のビル群を逃げ回り、公園のトイレに隠れていたがいよいよ身動きが取れなくなった。 その時、新興宗教“人権保護の会”のワゴン車に拾われたのだ。  スーツを着た教団の幹部一人と信者二人。真北の四人を乗せたワゴン車は、ビルが林立する都心部から離れた住宅地の道路に差し掛かっていた。  ニュースやメディアで散々叩かれた自分を歓迎する人間がいるのも違和感を感じたが、その違和感はやがて膨張をしていく。  「どういうことだ」  「あなたは当教団の保護対象となりました」  「そうじゃない…この住宅地は一体何だ?」  今、女子高生を数名殺害した猟奇殺人鬼がワゴン車で白昼堂々と住宅地を通過したのだ。それも18歳の若さで自分を虐めた女子生徒の復讐という動機で。 にも関わらず何事もなかったように、住宅地の中は静か過ぎる。  「教団の敷地内です」  住宅地の道路。一帯に建つ民家や、公園、コンビニ、学校、銀行などそのどれもが人権保護の会の所有物。ここに棲む住人全てが信者である。  真北は言葉を失った。  けれどワゴン車から降りるという選択肢は真北の頭にはなかった。匿ってくれる隠れ家を見つけたのだ。このまま車内の信者三名を殺害しワゴンを奪い、手頃な家を探しそこでずっと生活していった方が楽だと考えたからだ。 しかし教団幹部、宮崎はそうはさせなかった。  「真北さんには、先ず我々の教祖に挨拶して頂きます」  人権保護の会には木山という教祖がおり信者達を統括し教団活動を取り仕切っている。木山はワゴン車が通過した道路から暫く走らせた所にある総本山ビルにおり滅多に住宅地には姿を現せないが信者達からは慕われている。
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