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「勧誘活動は我々はしませんよ」
「しないだと?」
宗教活動やこれだけ広大な敷地内を維持するには信者達から維持費を徴収しなければ不可能なのだが、それをせずにどうやってこれだけの規模のものを維持出来ているのか、真北はその絡繰りが知りたくなった。
「どういう仕組みだ?」
「人権保護の保護対象はあなたのような人が主な保護対象です」
宮崎は教団活動を説明する。人権保護の会は殺人鬼のみならず警察に追われて棲む場所に困った全ての犯罪者を始め、公園や駅や地下鉄のホームで暮らすホームレス。家出した女子高生といった身よりのないものを保護対象とし、生活保護や就職支援に職能訓練などを行っていること。
だが真北が求めているのは隠れ家であり、教団活動や信者との人間関係といったものは望んでいなかったので宮崎の話に興味は示さなかったが、不思議と肩の力は抜けていた。
教団の敷地内という巨大な隠れ家に自分と似たような人間の集まりが大勢いると知ったからだ。
「着きましたよ」
宮崎は敷地内では一番大きな白色のビルの駐車場に車を止めると、真北にそう言った。
二名の付き添いの信者もワゴン車から降りると、真北も車から降り、敷地内のアスファルトに足を付ける。
真北にはある計画が頭の中に既にあった。
教団には女子高生の信者が何名かが在籍していること。教団の敷地内で殺人を犯しても誰にも捕まることはないんじゃないかと。自分の満足がいくまでそれが出来そうだ。
けれど本当に警察はここに捜査に来ないのか疑わしかったので宮崎に訊ねた。
「ここでトラブルが起こった時はどうなるんだ?」
「教団内部で処理します」
「どんなトラブルでもか?」
「教団では教祖がルールなので皆さんにはそれに従って貰うようにしています」
詰まり、ここで暴行や強姦、果ては誘拐からの殺人が起ころうが一切警察は介入して来ない。教祖が全てを裁く権限を持っていると言う事だ。
真北は歪に口角を吊り上げた。
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